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2013 Aug.9
「Entrepreneurship Seminar & Workshop in Tokyo」レポート

理想の社会をつくるために。

「日本全国から社会に対して挑戦する若者を輩出する」を目的に、学生が中心となって2年前から活動を始めた「Young Entrepreneurs(ヤングアントレプレナーズ)運営委員会」。アメリカ大使館、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス主催のもと、日本全国の大学生、大学院生を集めて毎年行われているセミナー&ビジネスプランコンペティションは活況を呈しています。そのイベントに参加するのは起業家精神を持った若者たち。今回は9月に予定されているイベントを前に、東京でのプレイベントとしてLichtpuntjeコミュニケーションスペースで起業家によるセミナーと学生によるワークショップを開催。「自分の思い描く理想の社会に近づけるための、一歩を踏み出すきっかけ」になれば、と開かれた本イベント。Lichtpuntjeコミュニケーションスペースを舞台に若者たちが「夢」と向き合った、その模様をレポートします。

<主催>
アメリカ大使館
米日カウンシル/TOMODACHI Initiative
一般財団法人SFCフォーラム
Young Entrepreneurs運営委員会

<協力>
Lichtpuntje
慶應SFCイノベーション&アントレプレナーシップ・プラットフォーム研究コンソーシアム

<講師>
川添 高志(ケアプロ株式会社 代表取締役社長)

理想の社会をつくるために。

人は必ず「失敗」する

人は必ず「失敗」する

イベントが行なわれたのは6月最終の日曜日。Lichtpuntjeコミュニケーションスペースに集まったのは、スタッフを含む30名近い学生たち。その多くはまだ大学1、2年生というから意識の高さに驚かされる。スケジュールは前半が講演、後半はワークショップ。午後1時のスタートから6時の閉会まで、休憩を挟みつつ行なわれた。

冒頭、挨拶に立ったのは慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のインキュベーションマネージャー廣川克也氏。現在はSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)に通う学生が中心となって活動しているYoung Entrepreneurs運営委員会の生みの親である同氏から、まずは参加者全員に向けてのメッセージが贈られた。

「今日はみなさんが社会に挑戦する一歩を踏み出すきっかけをつかんでほしいと思います。」

人は新しい何かをはじめようとすると「必ず失敗する」。一生懸命やっても失敗するのは当たり前。ただし、そうやって挑戦をつづけることで問題の本質は見えてくるし、アイデアも浮かんでくる。

「新しい価値というのはいままでにあったものをいろいろと組み合わせることで生まれる。そしてそれはさがしに行かなくても自分の中にあったりする。今日のワークショップではそれに挑戦してほしいと思います。」

この言葉を受けて、登壇したのは本日の講師であり起業家(アントレプレナー)であるケアプロ株式会社代表取締役の川添高志氏。ワンコイン(500円)で骨密度や血糖値、コレステロール値、中性脂肪などが簡単に検査できる「ワンコイン健診」を世の中に広めている川添氏に、起業に挑戦した経緯やそこに託した思いを語っていただいた。

「理想の自分」とは「理想の社会をつくれる自分」

「理想の自分」とは「理想の社会をつくれる自分」

川添氏は元看護師。起業を考え始めたのは高校生のときだったという。きっかけは大手企業に勤めていた父のリストラと祖父の死だった。大きな会社にいても仕事を失うことはある。人間に与えられた時間には限りがある。それを目の前につきつけられた川添氏は「どんな社会変化が起きても自分で仕事をつくることができる人間になりたい」と思うようになった。悶々と考えた末に辿り着いたのは医療ビジネスだった。医療や健康にはもともと関心があった。理由は子どもの頃に体験した肺炎やポリープの切除。病気との闘いは幼い自分の目を「健康」へと向けさせた。病気が治ったときの親の喜ぶ顔が忘れられずに、少年時代は「元気な自分でいよう」とサッカーやレスリング、水泳などスポーツに取り組んだ。食べ物も栄養素が高いものを意識して食べた。「炭酸飲料は骨を溶かす」と聞いて、実際にコーラとフライドチキンの骨を使って実験をしてみたり、「うんち」の研究もした。そうした研究の記録を何冊もの大学ノートに綴った。

祖父が亡くなる前、入所していた老人ホームで「むごい」と思えるような光景を見た。経営状態のよくなかったその老人ホームでは、食事の管理や入浴サービスが雑に行なわれていた。「経営が悪いのなら経営を変えればいいのでは」と思い、悶々としている中で「誰かのために生きたい」という1つの道筋が見えてきた。

「これには親の影響もあったと思います。僕は子どもの頃から親には人のために生きなさいと言われて育っていたんです。」

何かをなそうとするとき、自分のために生きるのでは「限界がある」と感じた。「誰かのために生きる方が、いろいろな可能性が見えてくるのでは」とも。「理想の自分」とは「理想の社会をつくれる自分」。そう「マインドセット」して、高校卒業後は慶應義塾大学の看護医療学部で医療経営について学んだ。在学中にはアメリカの医療機関に研修にも行った。そこで見たのはスーパーマーケットの中での健康診断やインフルエンザワクチンの予防接種が受けられる「ミニッツクリニック」だった。日本では法律の壁があって難しい簡易診療所だが、これが後の「ワンコイン健診」のヒントになった。

健康への思いから生まれた「ワンコイン健診」

健康への思いから生まれた「ワンコイン健診」

卒業してからは看護師として東大病院で糖尿病患者の看護にあたった。糖尿病は生活習慣病。症状が悪化すると足を切断したり、失明したり、人工透析を受けるといったことになる。ここで川添氏は、多くの糖尿病患者が発病するまで健康診断を受けていなかったという事実を知る。主婦やフリーター、自営業者など、その数は約3,300万人。

「人口の4分の1もの人が健康診断を受けていない。これを改善せねばと思ったんです。」

現在、日本人1人あたりが亡くなるまでの間に使う医療費は1,500万円。そのうち生活習慣病にかかる金額は600万円。健康診断受診後に食事を改善するなどの予防医療が広がれば、医療費や税金の削減につながる。何よりも病気になる人を減らしたい。そこで思いついたのが誰でも気軽に受けることのできる「ワンコイン健診」だった。「マクロ」と「ミクロ」の視点で市場を調査した。1,000人あまりにアンケートを取り、ニーズがあることを感じた。ワンコイン健診は受診者自身が簡単な検査キットを使って採血をするもの。これならば法的に問題がないことも弁護士を介して確かめた。貯めていた1,000万円を資本金に会社を設立。起業をしたのは25歳のときだった。社名は「健康的な社会をつくるために革新的なヘルスケアをプロデュースしたい」という思いから「ケアプロ」とした。

「事業形態は店舗と催事、フランチャイズの3つ。最初の店舗は中野に開きました。」

開いた早々、保健所の人間が訪ねて来た。法律はクリアしているのに「前例のないものは認められない」と言われた。他の店舗でも「近隣の開業医からクレームがきた」と行政から「待った」がかかった。起業に際し、綿密に準備は重ねたはずだったが「根回しが足りなかった」ことに気が付いた。

「それからはもう、医師会の会長さんや医師の先生方、行政の担当者などをノックしてまわる日々。ワンコイン健診は先生たちの患者さんを奪うわけではない。ターゲットはいままで健康診断を受けていなかった人たちなんです、と説いてまわりました。」

真意を伝えたことで、医師も行政も協力してくれるようになった。「敵対者をつくらずに仲間になってもらう」ことの大切さを学んだ出来事だった。

世の中に必要だと思うことを大切にする

ワンコイン健診は看護師が1人いればできるサービスだ。現在の事業は催事が95パーセント。デパートやスーパー、パチンコ店などで屋台のような店舗を出し、多くの人に自身の健康をチェックしてもらっている。この健診のメリットは3つ。1つは「マクロな社会の問題が解決できる」点。もう1つは「市民の健康問題を解決できる」点。そしてもう1つは、「新しい産業を生み出すことができる」点だ。医療に関していえば、日本の貿易赤字は6,000億円。ワンコイン健診によって健康な人が増えればこの額は減らすことができるし、逆にワンコイン健診を輸出して外貨を稼ぐこともできる。
現実にケアプロではインドでの事業展開を計画中。他のアジア各国も視野に入れている。

「日本でも海外でもビジョンとして考えているのは、〈ケアプロ健康サイクル〉といったものです。美容院に行くように3か月に1回くらいワンコイン健診を受けてもらう。そこで悪玉コレステロールが多いとわかれば食事のメニューを変えるとか。そんなふうに自分で自分の健康を管理できる社会にしていくことが僕の理想です。」

ビジネスには失敗がつきもの。川添氏もこの5年近い日々の中では、事業化したもののうまくいかずにやめたものや、はじめてから足りないと感じたもの、あるいは社内の人事などで失敗や苦い経験を積んでいる。

「やればやるほどいろんな問題にぶつかります。毎日、目の前の問題に取り組んで、それを解決しながら少しずつ理想に近付いている。それが現状ですね。」

「社会にはこれが必要だ」と強く感じて起業を決意した川添氏。今では自治体のトップなどからも相談を受けることが多くなった。

「自分の体験の中からこれは世の中に必要だと思うことがあったら、それを大切にしてください。何か新しいことをしようとするとまわりから反対されるけれど、自分の信念を貫くことが大事だと思います。」

講演は拍手とともに終了。質疑応答の時間では、「海外事業」や「スタッフの雇用」、「市場のリサーチ」、「社員との接し方」、「思いを伝えて人を巻き込んでいく方法」等々について、延べ10数人が活発に質問。参加者が皆、川添氏の話に「何か」をつかんだことが伺われた。

世の中に必要だと思うことを大切にする

チームに分かれてワークショップ

世の中に必要だと思うことを大切にする

後半は、そのつかんだ「何か」を実践に移す時間。4つのチームに分かれ、「自分の体験の中からこれは世の中に必要だと思うことを大切に」という川添氏の言葉に沿って、「問題」を発見し、「解決」へと導くワークショップを行った。

ワークショップの手順は3段階。ステップ1では「問題を出してまとめてもらう」。ステップ2では「解決策をさぐる」。 最後のステップ3では「みんなに発表」する。各チームにはスタッフから1名ずつチューターを配置。互いに自己紹介しあったあと、メンバーそれぞれが感じている身近な社会の問題について、ここではその中のどの問題を取り扱うか、またどう解決していくか、制限時間内にブレインストーミングなどを重ねながらステップ3のプレゼンテーションへとつながるディスカッションを繰り広げてもらった。

参加者の多くはこうしたディスカッションは未経験。まずはわかりやすいところから、ここ1週間を振り返って「身の回り」のことで、解決したい、すべきだという“問題”を考えてみてもらった。答えは自分自身に訊いてみる。日常の中で驚いたことや怒りを感じたこと、感情を揺さぶられたものが「問題」だ。そうして各自が出し合った問題を「なぜそれが問題なのか」、「その問題はいつ起きているのか」、「それは誰にとっての問題か」「それが解決するとどうなるか」、といったようにまとめ、互いに共有する。そしてチームとしてアプローチする問題を1つに絞る。そのあとはブレインストーミングに入り、問題の解決方法を考える。これらのパートを時間制限を設けた上で進めていくと、決められた時間内である程度の解決方法が見出せる。

時間制限を設けた上で進めていくと、決められた時間内である程度の解決方法が見出せる。

「問題」を「解決」するにはブラッシュアップを重ねること

「問題」を「解決」するにはブラッシュアップを重ねること全員がポストイットに思いついたアイデアを書いてはホワイトボードに貼っていく

ブレインストーミングの最初はトレーニング。「おばあちゃんと孫が一緒に遊べるアイデアを考えてください」という課題のもとに、全員がポストイットに思いついたアイデアを書いてはホワイトボードに貼っていく。制限時間が終わるころには数十のポストイット=アイデアが生まれている。このようにブレインストーミングは短時間でアイデアを出すのには非常に有効な手段といえる。しかも時間が3分程度に限られているので「最大限の熱量」で集中して考えることができる。つづく本番でも予行演習の効果か、各チームとも滞ることなくアイデアを出しあうことができた。

そしてステップ3。「発表」の場で各チームが取り組んだテーマは右の4つ。「よりよい健康社会をつくるため、健康に対する意識がまだそれほどない学生たち(若い世代)にアプローチする」、「高齢者と若者のつながりをつくる」、「歩きタバコをなくす」、「座るべき人が座れる電車にしたい」。これらを各チームが5分間のなかで「なぜ問題なのか」を説明し、自分たちが見つけた解決策を発表する。発表終了後は質疑応答とスタッフからのフィードバック。解決策は自分たちが見つけたものだけとは限らない。しっかり考えたつもりでも見落としている部分はあったりする。他人の意見や疑問を受け止めることで、発表の方法や解決策はさらにブラッシュアップされていく。

今回はあくまでも本イベントに向けてのプレイベント。目的は「一歩を踏み出すきっかけをつかんでもらう」こと。ワークショップの最後は、廣川氏から全体に対するフィードバックとアドバイスをいただくという形で締めくくった。

アイデアをブレストして、プランを構築して、発表して、フィードバックを受けてブラッシュアップをする

「今日は出してもらったアイデアをブレストして、プランを構築して、発表して、フィードバックを受けてブラッシュアップをする、ということを体験しました。ブラッシュアップは一度でなく何回も何回もしていけば必ずいいものができます。川添さんは規制と既得権益の塊のような世界でチャレンジして、いまや国をも動かそうとしている。そこには壁もあったし失敗もあったけれど、挑戦して実績を積み重ねていけば協力者が現われて、壁は必ず乗り越えられる。みなさんもできないことはないんだと信じて、よりよい社会をつくっていってください。」

5時間以上に及ぶ長丁場のイベントはこうして閉幕。「夢」を応援するLichtpuntjeにふさわしい、若さと熱気に溢れた時間であった。

5時間以上に及ぶ長丁場のイベントはこうして閉幕「夢」を応援するLichtpuntjeにふさわしい、若さと熱気に溢れた時間であった

Information 1

川添 高志 氏

1982年、兵庫県生まれ。慶応義塾大学看護医療学部卒業。在学中、米国の医療機関にて研修を受ける。東京大学病院勤務後、2007年12月ケアプロ株式会社を設立。「2010年社会イノベーター公志園」審査員特別賞受賞。

公式サイト
ケアプロ株式会社

Information 2

Young Entrepreneurs 運営委員会

「日本全国から社会に対して挑戦をする若者を輩出する」という理念のもと、全国の学生を対象に学びの機会を提供している。今年9月には、アメリカ大使館、慶應義塾SFCと協同をした、アントレプレナーシップセミナー&ビジネスコンテストを開催する。活動拠点は、東京、東北、関西と全国にまたがり、大学生自身が仲間とともに切磋琢磨しながら、「社会に価値を創造する事に挑戦をする」という活動に全国から共感の声が寄せられている。

公式サイト
Committee of Young Entrepreneurs

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