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2014 Feb.20
お気に入りの1冊 —My Favorite Book— Vol.7

表現の「自由さ」を教えてくれた1冊
『せいめいのれきし 地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし』
バージニア・リー・バートン著 いしいももこ訳

読書は人生の糧であり、本はときに「夢」へと進む自分を導いてくれる「師」となってくれます。本シリーズは各方面で活躍されているみなさんにそうした自分にとって唯一無二の本、「お気に入りの一冊」をご紹介いただくコーナーです。第7回目に登場していただくのは、漫画家として、漫画原作者として、エッセイストとして、そして音楽家として幅広く活躍されている久住昌之さん。「物事を並列で見ることと、自由に表現するということを教えてくれた1冊」と紹介してくださったのは、『ちいさいおうち』や『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』で有名なアメリカの絵本作家・バージニア・リー・バートンの『せいめいのれきし』。刊行から半世紀近くが経った今も色褪せない名作絵本の魅力を語ってくださいました。

語り手
久住昌之(漫画家、漫画原作者)
聞き手
高野 裕太(Lichtpuntjeスタッフ)
表現の「自由さ」を教えてくれた1冊

幸せな読書体験を与えてくれた『せいめいのれきし』

久住さんインタビューの様子

高野今日お持ちいただいた『せいめいのれきし』はロングセラーの絵本ですね。

久住これは大学を出てから新しく買ったものなんですが、最初に読んだのは1964年、小学校1年生のときでした。母親が新聞広告を見て初版本を買って来てくれたんです。内容はタイトル通りで、太陽や地球の誕生から生命が生まれて、それが海から陸に上がって恐竜の時代となり、氷河期を迎えたりして、そして人間の時代へ、という生き物の歴史が全部入っている本です。

高野子ども向けにしてはページ数もあるし、難しそうなことも書いてありますね。

久住最初は恐竜が好きでそのページばかり見ていました。それがだんだんといろんなことに気が付き始めるんですよ。「あれ、この絵の隅に人が立っているぞ」とか。で、目次を見ると、「プロローグ」とか「1まく 古生代」とか書いてあるんです。「あ、なるほど、この本はお芝居になっているんだな」って。目次がお芝居のプログラムになっていて、最初のタイトルが入ったページでは劇場の中で女の人たちがそのプログラムをお客さまたちに配っている絵が描かれている。本を開くと表紙の見返しが黒で、最後の見開き部分は黄色になっている。黒は「無」で黄色は「光」を意味しているんですね。表紙にしても最初の生命から人間に至るまで、順を追ってさまざまな生物が描かれている。そういう、いろんな仕掛けが詰まっているんです。

高野すごいですね。久住さんは6歳くらいでそれに気付かれたんですか。

久住いやいや、何年もかけてですよ。気に入って何度も開いているうちに少しずつ気が付いていき、中学生くらいで本当のおもしろさがわかりました。作者はこの本を作るのにかなり長い時間をかけたそうです。やっぱり、こんなロングセラーになるようないい本は、長くかけて作り込まないと駄目なんだってことですね。今の時代、何でもすぐに答えを求めようとしますよね。でも、世の中には1回でわからなくていいこともあるんですよ。ぼくはこの本を小学生の時から中学生まで長い時間をかけて理解していった。それはすごくいい、幸せな体験だったと思います。すごく影響を受けて、今でもときどき読み返しているくらいですよ。母が買ってくれた初版本は今も弟が持っています。

<『せいめいのれきし』より抜粋>

考えられないほど大昔、太陽がうまれました。

そしてこの太陽は、何億、何兆という星の集りである、銀河系とよばれる星雲のなかの、ひとつの星です。そしてまた、この銀河系は、宇宙とよばれる、ひろいひろい空間を、おそろしい勢いで、ぐるぐるまわっている、何億、何兆もの星雲のひとつです。

わたしたちの太陽は、これらの星のなかで、一ばん大きくもなく、一ばん小さくもありませんが、わたしたちにとっては一ばんだいじだ――というわけは、太陽の光と熱がなかったら、この地球では、何もいきていけないのです。

高野影響を受けられたのはどういう点ですか?

久住この本の中では、微生物も、恐竜も、人間も、すべて並列で扱われているんです。そういう物の見方を教わりました。僕たちはどうしても物事を偏った目で見てしまいがちですが、本当はすべて並列で平等なんですよね。クリエイターとしても表現に対する「自由さ」というものを学んだ。この本の絵ってちょっと漫画風だったりして自由に描かれているんです。僕は、漫画を描いて、文章も書いて、切り絵をやったり、音楽をやったりしているんですが、メインがあるわけではなく全て並列なんです。「並列さ」と「自由さ」、この本から受けた影響はこのふたつですね。

久住さんインタビューの様子

自分の好きなものはひとつのラインでつながっている

久住さんインタビューの様子

高野久住さんは子どもの頃はどんな本が好きだったんでしょう?

久住絵の入った本が好きでした。夢中になったのは平凡社から出ていた『絵本百科』。これは全5巻でB4大の大きな本なんです。その中に森羅万象の諸々が紹介されている。内容がまた自由で、「あ」行の最初のページが「アイヌ」なんです。説明は少なくて、見開きに絵がびっしり入っていました。「うお」というページだと、海の魚が大混雑状態で詰まっている。火山のページなんて、ドカーンと火山が爆発している絵なんです。とにかくすごい編集センスでしたね。

高野絵以外にストーリーとか文章に惹かれた本はありますか。

久住やはりバージニア・リー・バートンの絵本で『名馬キャリコ』という絵本ですね。この本は瀬田貞二さんの訳が独特でおもしろい。『指輪物語』も読んでおもしろいなと思ったら瀬田貞二さんの訳でした。それと、最近知ったのですが、平凡社の『絵本百科』も瀬田さんが編集していたのです。これは僕にとっては発見でしたね。自分の好きなものが40年以上かけてひとつのラインでつながっていた。それを自分で発見したというのが嬉しかったですね。

高野久住さんは著書をたくさんお持ちですが、近著の中でおすすめの本があったら紹介してください。

久住『野武士、西へ』。雑誌の連載で月に一度、2年をかけて東京から大阪までを散歩をしたドキュメンタリーです。ちょうど4年くらい前、自分の中で「出せるものは出し尽くした」という思いがあって、「少し時間をかけて大変なことをしてみよう」と始めてみたのがこの企画でした。世の中は散歩ブームでしたが、それってテレビや雑誌で見たコースを歩くだけの「観光」だったりするんですよね。そうじゃなくて、「本物の散歩」をしようじゃないかと。それで大阪まで行ったんです。散歩だから地図には頼らず、海や新幹線や東海道線に沿って西へと歩く。山の中で迷ったり、雨に降られたり、事故に遭ったり、大変なことも多かったですが、本当におもしろかった。連載期間中は3・11の震災が起きたりもして、自分にとっては思い入れのある1冊ですね。

高野大阪までの大散歩ですね!道中、久住さんが何を感じて、どんなことに遭遇したか。非常に気になってきましたので、ぜひ読んでみます!本日はありがとうございました。

『せいめいのれきし 地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし』(バージニア・リー・バートン著 いしいももこ訳/岩波書店)

<今回紹介した本>

『せいめいのれきし 地球上にせいめいがうまれたときからいままでのおはなし』(バージニア・リー・バートン著 いしいももこ訳/岩波書店)

『野武士、西へ 二年間の散歩』(久住昌之著/集英社)

Information 1

久住 昌之 氏

漫画家、漫画原作者、エッセイスト、音楽家

1958年、東京都生まれ。1981年に、原作・久住昌之、作画、泉晴紀のコンビ「泉昌之」名で描いた短編漫画『夜行』で『ガロ』よりデビュー。実弟・久住卓也とのユニットQ.B.B作の『中学生日記』で、第45回文藝春秋漫画賞を受賞。テレビドラマ化された谷口ジロー氏との共著『孤独のグルメ』はフランス、イタリア、スペイン、韓国などで翻訳出版されている。『花のズボラ飯』(画・水沢悦子)は「マンガ大賞2011」で4位、「このマンガがすごい!2012」でオンナ部門第1位を獲得。漫画、エッセイ、デザイン、音楽など、多方面で創作活動を展開している。著書多数。

Information 2

Lichtpuntjeコミュニケーションスペース

インタビュー当日、久住さんにお話を伺ったのはLichtpuntjeコミュニケーションスペース。平日、土日を問わずどなたでもご利用いただけるフリースペースです。「夢・お金・環境」をテーマにしたLIBRARYの蔵書は1,500冊。GALLERYには書評サイト「HONZ」で紹介されたおすすめ本約800冊を所蔵。本好きにはたまらない空間です。文化、芸術、スポーツ、最新トレンド等のセミナーやイベントも頻繁に開催。場所は東京ミッドタウン/ミッドタウンタワー7F。

夢が実現する「Lichtpuntje コミュニケーションスペース」

詳しくはこちらから。
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